ITコンサルタントが語る必要スキル

第89回 CCSF追補版の「新しいIT人材の育成に向けての3つのモデル」

■ 今回は共通キャリア・スキルフレームワーク(CCSF)の最新情報です。

2012年3月26日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)はニュースリリース「新しいIT人材の育成に向けて3つのモデル(タスク/スキル/人材)を定義 ~「共通キャリア・スキルフレームワーク(第一版・追補版)」の公開~(※1)」を公開しました。このコラムの第49回「いよいよ姿を現した『共通キャリア・スキルフレームワーク』とは(※2)」で取り上げましたとおり、このフレームワークは単なる枠組みではなく、ITスキルの取得や向上を希望している方のガイドラインということができます。そこで、今回は、この第一版・追補版のポイントを説明します。

■ 共通キャリア・スキルフレームワーク(CCSF)とは

CCSFの第一版は、2008年10月に策定、公開されました。このコラムの第49回で説明しましたとおり、CCSFとは「必要とされる高度IT人材について、人材像とその保有すべき能力や果たすべき役割(貢献)の観点から整理した共通の人材育成・評価のための枠組み」です。「枠組み」という言い方が分かりづらければ、IPAのサイトにあるとおり「今後、わが国が目指すべき高度IT人材像に即したキャリアと求められるスキルを示したもの」と理解すると良いでしょう。そして、情報処理技術者試験の構成の基礎になっています。また、このコラムで何度も紹介しているITスキル標準(ITSS)、組込みスキル標準(ETSS)、情報システムユーザースキル標準(UISS)から成る「IT人材評価指標」が参照すべき「共通のモデルを提供するもの」でもあります。

そして、今回、IPAは、多様化するビジネスモデルに対応していくため、スキル標準共通の人材育成の枠組みを強化した「共通キャリア・スキルフレームワーク(第一版・追補版)」を公開しました。この正式文書と関連資料はIPAのサイト(※3)から誰でもダウンロードすることができます。

■ CCSF追補版の背景

IPAは、今回の追補版の主たる発行理由を「多様化するビジネスモデルへの対応」としています。CCSF第一版は、その有効性を高める必要がある局面に突き当たっていました。それは、ITを取り巻く環境の急激な変化が、IT人材に求められる業務内容を多様化させたことです。この「環境の急激な変化」の例としては、ビジネスの更なるグローバル化や、クラウドコンピューティング等ITにおけるサービス化の進展があります。

 また、IT人材白書によると「IT企業が技術者に求めるスキル」において「分野横断的な幅広い技術力」を必要とする声が最も高い割合を示しており、IT企業におけるITスキル標準の活用・検討上の課題として「自社IT人材に必要なスキルの明確化が難しい」ことや、「ITスキル標準の内容を自社向けにカスタマイズすることが難しい」ことが揚げられたとのことです。このことも、今回の追補版公開の背景となっています。

■ 新しいIT人材の育成に向けての3つのモデル(タスク/スキル/人材)

そこでIPAは、従来のCCSFを補う形で、スキル標準の共通モデルとして「タスク」、「スキル」、「人材」をモデル化し、スキル標準の各定義を共通の構造で横断的に理解、活用できるようにしました。それがこの追補版です。CCSF第一版は、レベル定義のための人材類型と知識体系(BOK:Body of Knowledge)のみでしたが、追補版では、タスクモデル(機能定義一覧)、スキルモデル(スキル定義一覧)、人材モデル(役割分担の例示)が追加されています。また、知識体系の改訂が合わせて行われており、スキル標準と情報処理技術者試験との関連付けを強化し、試験を人材育成に有効活用できるようにしています。IPAはこの追補版により、前述の課題を抱えているIT企業は、その課題の解決を図ることが容易になり、自社のビジネス戦略に沿った人材像を定義・育成することができるようになるとしています。

■ CCSFの今後とITSSへの影響

IPAは、各社がこの追補版を企業戦略を成功させるために必要な人材の育成に活用し、IT人材の適切な育成の促進や、わが国のIT産業の強化につながることを期待しています。そして、今後、CCSFの3つのモデルを活用して、新たなサービス型の人材像例や、主に中小企業に向けた導入パターンを公開し、IT人材の育成支援を加速していくと共に、CCSFの3つのモデルを、各企業の導入事例を通して得た結果をもとに拡充していくとアナウンスしています。

また、このコラムの第42回「ITスキル標準V3登場のポイントは技術者育成(※4)」で紹介しましたITSSの改訂から、3年ぶりに新バージョンが登場し「ITスキル標準 V3 2011(※5)」として公開されました。今回の改訂では、「カスタマーサービス職」について見直しが行われています。IPAでは、この改版内容を上記の3つのモデルの拡充の一環として、今後CCSFのデータセットに反映していく予定とのことです。

■ まとめ

冒頭で述べたとおり、CCSFは情報処理技術者試験の構成の基礎になっています。よって、今回の追補版は今後の情報処理技術者試験になんらかの影響を与えることが想定できます。これから、レベル4試験までの合格を目指す方は、この動向もチェックしておきましょう。

 しかし、このことよりも重要なのは、IPAが、CCSFの利活用を促すための「活用ガイド」、3つのモデルの定義情報である「CCSFデータセット」、各企業が自社に合った人材像を定義する際に使用できる「CCSF Tool」を提供することです。これらを利用することで、利用者は自社のビジネス戦略に沿った人材育成施策の検討や見直しを図ることができると、IPAは述べています。これは企業内でスキルアップを目指す技術者や、技術者を目指して就職・転職する方に求められる人材像の定義でもあります。よって、CCSFやその追補版の内容を自ら理解しておくことは、自分のスキルプラン、キャリア計画を一歩先に進めることにつながります。せっかく公開されている資料ですから、是非一度、目を通しておくことをお勧めします。
(第89回 了:2012年4月)

(※1) IPAニュースリリース「新しいIT人材の育成に向けて3つのモデル(タスク/スキル/人材)を定義
~「共通キャリア・スキルフレームワーク(第一版・追補版)」の公開~
http://www.ipa.go.jp/about/press/20120326_2.html
(※2) 第49回 いよいよ姿を現した「共通キャリア・スキルフレームワーク」とは
http://resocia.jp/grand/tips/column/it/backno_49.shtml
(※3) 共通キャリア・スキルフレームワークと関連資料のダウンロード
http://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/ccsf/download.html
(※4) 第42回 ITスキル標準V3登場のポイントは技術者育成
http://resocia.jp/grand/tips/column/it/backno_42.shtml
(※5) 「ITスキル標準 V3 2011」関連資料
http://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/download.html

ITコンサルタント 平野正喜

ITコンサルタント 平野正喜(ランドッグ・オーグ)
http://www.rundog.org/

ヒューマンアカデミー非常勤講師
システム開発会社のエンジニアリーダー、マネージャー、採用担当責任者を経て独立し、個人事務所を 設立。ヒューマンアカデミー各校に加え、大学、企業教育などにて教壇に立つかたわら、講演、 ビデオ教材の作成・出演、書籍や雑誌での執筆でも知られる。 著書に、「ケータイビジネスを革新する技術 BREW」や「Eclipse辞典」がある。趣味は音楽と芝居で、 見聞きするだけではなくステージに立つこともある。

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